導入
みなさんこんばんは、かいです!
聴いてくださっている皆さんに感謝します。
ありがとうございます。
わたしたち末日聖徒イエス・キリスト教会の会員は、主からひとつの勧告を受けています。
これは現在の会員のみならず、古代から同じような勧告を受けていました。
それは、『シオンを築くこと』です。
シオンとはいったい何なのか、なぜわたしたちはこの勧告に従うのかをお話しします。
祈りのススメ
この記事内にはわたしたちが所属する末日聖徒イエス・キリスト教会の聖典である新約、旧約の聖書とモルモン書、教義と聖約、高価な真珠の中から聖句を引用しています。
また総大会と呼ばれる教会指導者たちの勧告などのお話からも引用する場合があります。
クリスチャンである方もそうでない方も、聖句を読むとき、以下のことに注意を払っていただけましたら幸いです。
『見よ、わたしはあなたがたに勧めたい。あなたがたにとってこの記録を読むことが、神の知恵にかなうようであれば、あなたがたはこれを読むときに、アダムが造られてからあなたがたがこれを受けるときまで、主が人の子らにどれほど憐れみをかけてこられたかを思い起こし、それを心の中で深く考えてほしい。
また、この記録を受ける時、これが真実かどうかキリストの名によって永遠の父なる神に問うように、あなたがたに勧めたい。もしキリストを信じながら、誠心誠意問うならば、神はこれが真実であることを、聖霊の力によってあなたがたに明らかにしてくださる。
そして聖霊の力によって、あなたがたはすべてのことの真理を知るであろう。』
(『モロナイ書』第10章3節〜5節)
シオンとは
『シオン』とは、心の清い人々が住む所という意味のほか、『心の清い者』という意味があります。
聖典にはシオンという言葉が度々出てきます。
『さて見よ、シオンがこれらのことを行うならば、シオンは栄え、自らを広げ、非常に栄光に満ちた、きわめて大いなる、そして甚だ恐ろしいものとなるであろう。
そして、地のもろもろの国民はシオンを尊び、言うであろう。「確かにシオンは我々の神の都であり、また、確かにシオンは倒れることも、その場所から移されることもあり得ない。神がそこにおられ、主の御手がそこにあるからである。
主はシオンの救いとなりシオンの高いやぐらになると、その強い力によって誓われた。」
それゆえ、主はこのように言う。まことに、シオンを喜ばせなさい。心の清い者、これこそシオンである。それゆえ、シオンを喜ばせなさい。一方、悪人は皆嘆き悲しむであろう。』
(『教義と聖約』第97章18節〜21節)
旧約聖書にあるシオンという名称
旧約聖書にもシオンという言葉は登場します。
ダビデの町はシオンと呼ばれていました。
『ソロモンは主の契約の箱をダビデの町、すなわちシオンからかつぎ上ろうとして、イスラエルの長老たちと、すべての部族のかしらたちと、イスラエルの人々の氏族の長たちをエルサレムでソロモン王のもとに召し集めた。』
(『列王記上』第8章1節)
またイザヤ書にもシオンの名が登場します。
『終わりの日に次のことが起る。主の家の山は、もろもろの山のかしらとして堅く立ち、もろもろの峰よりも高くそびえ、すべて国はこれに流れてき、
多くの民は来て言う、「さあ、われわれは主の山に登り、ヤコブの神の家へ行こう。彼はその道をわれわれに教えられる、われわれはその道に歩もう」と。律法はシオンから出、主の言葉はエルサレムから出るからである。
彼はもろもろの国のあいだにさばきを行い、多くの民のために仲裁に立たれる。こうして彼らはそのつるぎを打ちかえて、すきとし、そのやりを打ちかえて、かまとし、国は国にむかって、つるぎをあげず、彼らはもはや戦いのことを学ばない。』
(『イザヤ書』第2章2節〜4節)
イザヤは主から末日、つまり現代の教会が築いている多くの神殿とイスラエルの集合、そして福千年の裁きの様子を見せられました。
わたしたちの教会で聖典のひとつとされている『モルモン書』には、『ニーファイ書』という書物が収められてあります。
エジプトに売られたヨセフの子孫にあたるニーファイという人物が、紀元前約600年に入手した、純粋なままのイザヤ書の一部がその中に引用されています。
上に引用したのと同じ部分をニーファイ書から引用します。
『さて、終わりの時に次のことが起こる。主の家の山は山々の頂に堅く立ち、もろもろの丘よりも高くそびえ、すべての国民はそこに流れて来る。
多くの民が来て言う。「さあ、わたしたちは主の山に登り、ヤコブの神の家へ行こう。主はご自分の道をわたしたちに教えてくださる。わたしたちは主の道を歩もう。」律法はシオンから出、主の言葉はエルサレムから出るからである。
主は国民の中で裁きを行い、多くの人を責められる。彼らは剣を鋤先に、槍を鎌に打ち直し、国民は国民に向かって剣を上げず、彼らはもう戦いのことを学ばない。』
(『ニーファイ第二書』第12章2節〜4節)
かつて存在したシオン
旧約の時代を生きた預言者のひとりであるエノクは、この世でシオンを築き、その民を導きました。
エノクの名前とその記録は聖書にありますが、決して多くはありません。
ですが彼の功績は記録の少なさとは異なり、大いなるものです。
『ヤレドは百六十二歳になって、エノクを生んだ。
エノクは六十五歳になって、メトセラを生んだ。
エノクはメトセラを生んだ後、三百年、神とともに歩み、男子と女子を生んだ。
エノクの年は合わせて三百六十五歳であった。
エノクは神とともに歩み、神が彼を取られたので、いなくなった。』
(『創世記』第5章18節、20節〜24節)
最後の節でエノクは『神が取られたのでいなくなった』とあります。
このことについて、新約聖書にも記されています。
『信仰によって、エノクは死を見ないように天に移された。神がお移しになったので、彼は見えなくなった。彼が移される前に、神に喜ばれた者と、あかしされていたからである。』
(『ヘブル人への手紙』第11章5節)
預言者の中には、神によって死を制する力を与えられた者が複数います。
彼らはその信仰によって選ばれ、死を免れることでさらに神に使え、なすべきことを与えられます。
エノクもそういった人のひとりです。
エノクとシオンに住むその民は、義のゆえに神によって天へと上げられました。
黙示録を記したヨハネもまた、主が来られる時まで死を味わうことがないと記されています。
エノクの記録
シオンについてお話しする前に、預言者エノクについての記録を紹介します。
前述のように、聖書にはエノクについてほとんど記されていないのですが、『高価な真珠』と名付けられたわたしたちの教会の聖典には彼についての記録が載せられています。
かなり長くなりますが彼の記録は貴重ですので、その全てを引用します。
『ヤレドは百六十二歳になって、エノクをもうけた。ヤレドはエノクをもうけた後、八百年生きて、息子、娘たちをもうけた。ヤレドはエノクに神の道をすべて教えた。
エノクは六十五歳になって、メトセラをもうけた。
そして、エノクは地の上を行き、民の中を旅した。彼が旅をしていると、神の御霊が天から降り、彼のうえにとどまった。
そして、彼は天から声が告げられるのを聞いた。「わたしの子エノクよ、この民に預言し、彼らに言いなさい。『悔い改めなさい。主は次のように言われるからです。「わたしはこの民のことを怒っており、わたしの激しい怒りは彼らに向かって燃えている。彼らの心はかたくなになり、その耳は聞こえにくく、その目は遠くを見ることができない。
わたしが彼らを造った日以来、多くの世代にわたって、彼らは迷い、わたしを否定し、闇の中で自分の知恵を求め、彼らの忌まわしい行いの中で殺人を企て、わたしが彼らの先祖アダムに与えた戒めを守ってこなかった。
それゆえ、彼らは偽りの誓いを立て、その誓いによって自らに死を招いてきた。彼らが悔い改めなければ、わたしは彼らのために地獄を用意している。
これは、わたしが世の初めに、わたし自身の口から、しかも世の初めから送り出してきた定めである。そして、それが将来世の中に送り出されるように、あなたの先祖であるわたしの僕たちの口を通して、わたしはそれを地の果てまで布告してきたのである」と。』」
エノクはこれらの御言葉を聞いたとき、主の前で地に伏し、主の前に語って言った。「わたしがあなたの目にかなったのはなぜでしょうか。わたしは若者にすぎず、すべての人はわたしを憎みます。わたしは口の重い者だからです。どうしてわたしはあなたの僕なのでしょうか。」
主はエノクに言われた。「行って、わたしがあなたに命じたように行いなさい。そうすれば、あなたを差し貫く者は誰もいないであろう。あなたの口を開きなさい。そうすれば、それは満たされるであろう。わたしはあなたに語る力を与えよう。すべての肉なるものはわたしの手の内にあるからである。そして、わたしは自分が良いと思うままに行おう。
この民に、『あなたがたは今日、あなたがたを造られた主なる神に使えることを選びなさい』と言いなさい。
見よ、わたしの御霊があなたの上にあるので、あなたのすべての言葉を、わたしは正しいとする。
山々はあなたの前から逃げ去り、川はその流れを変えるであろう。あなたはわたしにつながっていなさい。そうすれば、わたしはあなたとつながっていよう。それゆえ、わたしとともに歩みなさい。」
主はエノクに語って言われた。「あなたの目に泥を塗り、それを洗いなさい。そうすれば、あなたは見るであろう。」そこで、彼はそうした。
そして、彼は神が造られた霊たちを見た。彼はまた肉体の目に見えないものも見た。それ以来、「主はその民のために、一人の聖見者を立てられた」という言葉がその地に広まった。
さて、エノクはその地の人々の中に出て行き、もろもろの丘と高い所に立って、大声で叫び、彼らの行いを責める証を述べた。すると、すべての人が彼に腹を立てた。
彼らは彼の言葉を聞くために高い所に出て来て、天幕を守る者たちに言った。「あなたがたはここにとどまって、天幕を守っていなさい。その間に、我々はあそこへ行って聖見者を見てくる。彼は預言をする。この地に変わったことがある。野生の男が我々の中にやって来たのだ。」
さて、彼の言葉を聞いたとき、彼に手を出す者はだれ一人いなかった。彼の言葉を聞いたすべての者に、恐れが及んだためである。彼が神とともに歩んだからである。
彼のもとに、その名をマヒヤという一人の男がやって来て言った。「あなたはだれで、どこから来たのか、はっきりと言ってください。」
そこで、彼は彼らに言った。「先祖の地であり、今日まで義の地である カイナンの地からやって来ました。わたしの父はわたしに神の道をすべて教えてくれました。
そして、カイナンの地から東の海沿いに旅をしていたとき、わたしは示現を見ました。まことに、天を見ました。そして、主はわたしと語り、わたしに命を下されました。この理由で、すなわちその命に従うために、わたしはこれらの言葉を語っているのです。」
エノクはその話を続けて言った。「わたしと語られた主は、天の神です。わたしの神であり、またあなたがたの神です。あなたがたはわたしの兄弟です。どうしてあなたがたは自分で自分に勧めをして、天の神を否定するのですか。
神は天を造られ、地は神の足台であり、地の基は神のものです。まことに、神はそれを据えられ、地の面に大勢の人をもたらされました。
死はわたしたちの先祖に及びました。それでも、わたしたちは彼らを知っており、否定することはできません。まことに、わたしたちはすべての中の最初の人、アダムさえも知っています。
わたしたちは、神の指によって示された手本に従って、わたしたちの中で覚えの書を記してきたからです。それはわたしたちの言葉で述べられています。」
エノクが神の言葉を語ると、民はおののき、彼の前に立っていることができなかった。
エノクは彼らに言った。「アダムが堕落したので、わたしたちは存在しています。そして、アダムの堕落によって死が生じ、わたしたちは不幸と災いを受ける者とされているのです。
まことに、サタンは人の子らの中にやって来て、彼を拝むように誘惑します。そして、人々は肉欲や官能におぼれ、悪魔に従う者となって、神の御前から締め出されています。
しかし、神はわたしたちの先祖に、すべての人が悔い改めなければならないことをお知らせになりました。
神は御自身の声によって、わたしたちの先祖アダムに呼びかけて言われました。『わたしは神である。わたしは世界を造り、また人々を、彼らが肉体にある前に造った。』
神はまた彼に言われました。『あなたがわたしに心を向け、わたしの声を聴き、そして信じ、あなたのすべての背きを悔い改め、まことに水の中で、恵みと真理に満ちている独り子、すなわちイエス・キリストの名によって、すなわちその名によって人の子らに救いが及ぶ、天下に与えられる唯一の名によってバプテスマを受けるならば、あなたは聖霊の賜物を受けるであろう。すべてのものをその名によって求めれば、何でも求めるものはあなたに与えられるであろう。』
わたしたちの先祖アダムは、主に語って、『人が悔い改めて水の中でバプテスマを受けなければならないのは、なぜでしょうか』と尋ねました。すると、主はアダムに、『見よ、わたしはエデンの園でのあなたの背きを赦した』と言われました。
このことから、『神の御子は最初のとがを贖われ、それによって両親の罪がその子供たちの頭に帰することはあり得ない。彼らは世の初めから罪がない』という言葉が人々の間に広まりました。
主はアダムに語って言われました。『あなたの子供たちは罪のうちに宿されるので、まことに彼らが成長し始めると、彼らの心の中に罪が宿る。そして、彼らは善を尊ぶことを知るために、苦さを味わうのである。
そして、善悪を知ることが彼らに許される。それゆえ、彼らは自ら選択し行動する者である。そこで、わたしはあなたに別の律法と戒めを与えた。
それゆえ、あなたの子供たちに次のことを教えなさい。すなわち、どこにいる人でもすべての人が、悔い改めなければならない。そうしなければ、決して神の王国を受け継ぐことはできない。清くない者はそこに住むことができない、すなわち、神の前に住むことができないからである。アダムの言葉で、聖なる人とは神の名である。また、神の独り子の名は、人の子、すなわちイエス・キリストであり、時の中間に来る義にかなった裁き主である。
さて、わたしはあなたに戒めを与える。あなたの子供たちに次のことを率直に教えなさい。すなわち、
背きによって堕落が生じ、その堕落が死をもたらす。あなたがたは水と血と、わたしが造った霊とによってこの世に生まれ、ちりから生けるものとなったので、まことにあなたがたは、水と御霊によって再び天の王国に生まれ、血によって、すなわちわたしの独り子の血によって清くされなければならない。それは、あなたがたがすべての罪から聖められ、この世において永遠の命の言葉を享受し、来たるべき世において永遠の命、すなわち不死不滅の栄光を享受するためである。
それは、あなたがたが水によって戒めを守り、御霊によって義とされ、血によって聖められるからである。
それゆえ、天の記録、慰め主、不死不滅の栄光の平和なること、すべてのものの真理、すべてのものを生かし活気づけるもの、すべてのことを知っており、知恵と憐れみと真理と公正と公平によって一切の権威を持つものが授けられて、あなたがたの内にとどまる。
さて見よ、わたしはあなたに言う。これが、時の中間に来るわたしの独り子の血によってすべての人に与えられる救いの計画である。
見よ、すべてのものにはそれに似たものがある。すべてのものは、現世にかかわるものも霊にかかわるものも、わたしのことを証するために創造され、造られている。すなわち、上の天にあるもの、地の上にあるもの、地の中にあるもの、地の下にあるもの、上のものも下のものも、すべてのものがわたしのことを証するのである。』
このように主がわたしたちの先祖アダムと語られたとき、アダムは主に叫び求めました。すると、彼は主の御霊に連れ去られ、水の中に運ばれ、水に沈められ、そして水から連れ出されました。
このようにして、彼はバプテスマを受け、神の御霊が彼に降られました。このようにして、彼は御霊によって生まれ、内なる人において生かされた者となったのです。
そして、彼は天からの声が告げられるのを聞きました。『あなたは火と聖霊によってバプテスマを受けた。これは今から後とこしえに、父と子の証である。
あなたは、永遠から永遠にわたって、日の初めもなく年の終わりもない者の位に従う者である。
見よ、あなたはわたしにあって一つであり、神の子である。このようにして、すべての者はわたしの子となることができるのである。アーメン。』」
また、エノクはその話を続けて言った。「まことに、わたしたちの先祖アダムはこれらのことを教えました。すると、多くの者は信じて神の子となりましたが、信じないで罪の中に滅びた者も大勢いました。彼らは今、苦しみの中で恐れながら、火のような神の激しい怒りが自分たちに注がれるのを待っています。」
そのときから、エノクは預言し始めて、民に言った。「わたしが旅の途中に、マフヤという所に立って主に叫び求めると、天から、『あなたは引き返して、シメオンの山に登りなさい』という御声がありました。
そこで、わたしは引き返して、その山に登りました。そして、その山に立つと、わたしは天が開くのを見て、栄光に包まれました。
わたしは主にまみえました。主はわたしの前に立ち、顔と顔を合わせて、人が互いに語り合うようにわたしと語られました。そして、主はわたしに言われました。『見なさい。そうすれば、わたしはあなたにこの世を多くの世代にわたって見せよう。』
それから、わたしはシュムの谷に、まことに天幕に住む多くの人を見ました。それはシュムの民でした。
主は再びわたしに、『見なさい』と言われました。そこで、わたしが北の方を眺めると、天幕に住むカナンの民が見えました。
主はわたしに、『預言しなさい』と言われました。そこで、わたしは預言して言いました。『見よ、大勢のカナンの民がシュムの民に対して陣立てをして出て行き、彼らを殺して、ことごとく滅ぼすであろう。そして、カナンの民はその地で分かれて、その地は実を結ばない不毛の所となり、カナンの民のほかにいかなる民もそこに住むことはない。
見みよ、主はひどい暑さをもってその地をのろわれ、その不毛はとこしえに続くであろう。』そして、カナンのすべての子らのうえに暗黒が及んだので、彼らはすべての民の中でさげすまれました。
また、主はわたしに、『見なさい』と言われました。そこで、わたしが眺めると、シャロンの地と、エノクの地と、オムナーの地と、ヘニの地と、セムの地と、ハネルの地と、ハナニハの地と、そのすべての住民が見えました。
すると、主はわたしに言われました。『この民のところへ行って、「悔い改めよ」と言いなさい。わたしが出て行って、のろいをもって彼らを打ち、彼らが死ぬことのないためである。』
そして主は、御父と、恵みと真理に満ちておられる御子と、御父と御子のことを証される聖霊との御名によってバプテスマを施すようにとの戒めをわたしに与えられました。」
それからエノクは、カナンの民を除くすべての民に、悔い改めるように呼びかけ続けた。
エノクの信仰は非常に深かったので、彼は神の民を導いたが、敵が彼らと戦おうとして攻めて来た。そこで、彼が主の言葉を語ると、まことに彼の命に従って、地は揺れ動き、山々は逃げ去った。水の流れる川はその流れを変え、ライオンのほえる声が荒野から聞こえた。そして、すべての民族が大いに恐れた。それほどエノクの言葉は力強く、また、それほど神が彼に与えられた言葉の力は大いなるものであった。
また、海の深みから一つの陸が出てきた。神の民の敵は大いに恐れたので、逃れて遠く離れて立ち、海の深みから出てきた陸に上がった。
その地の巨人たちも遠く離れて立った。そして、神に逆らって戦ったすべての民にのろいが下った。
そのときから、彼らの中に戦争と流血があった。しかし、主は来て、主の民とともに住まわれた。そして、彼らは義のうちに住んだ。
主への畏れがすべての民族にあった。それほど主の民のうえにある主の栄光は大いなるものであった。主はその地を祝福され、彼らは山々の上と高い所で祝福されて、まことに栄えた。
主はその民をシオンと呼ばれた。彼らが心を一つにし、思いを一つにし、義のうちに住んだからである。そして、彼らの中に貧しい者はいなかった。
エノクは、義をもって神の民に教えを説き続けた。そして、その生涯に、彼は一つの町を建て、それは聖なる都、すなわちシオンと呼ばれた。
さて、エノクは主とともに語り、主に言った。「必ずや、シオンはとこしえに平穏に住むことでしょう。」しかし、主はエノクに言われた。「わたしはシオンを祝福したが、民の残りの者をのろった。」
さて、主はエノクに、地に住むすべての者を見せられた。彼はまことに、時がたってシオンが天に取り上げられるのを見た。また、主はエノクに、「とこしえにわたしの住まいを見なさい」と言われた。
エノクはまた、アダムの子らである民の残りの者も見た。彼らは、カインの子孫を除くアダムのすべての子孫の混り合った者であった。カインの子孫は肌が黒く、彼らの中にいるべき場所がなかったからである。
そのシオンが天に取り上げられた後、エノクは、まことに、地のすべての民族が彼の前にあるのを見た。
そして、何世代かが過ぎ、エノクは高く上げられ、まことに、御父と人の子の懐にいた。そして、見よ、サタンの力が地の全面にあった。
また、彼は天使たちが天から降るのを見た。そして、彼は大きな声が、「災いである。地に住む者は災いである」と告げるのを聞いた。
また、彼はサタンを見た。サタンはその手に大きな鎖を持ち、それは地の全面を闇で覆った。サタンは見上げて笑い、その使いどもは喜んだ。
エノクはまた、天使たちが天から降って、御父と御子のことを証するのを見た。聖霊が多くの者に降られ、彼らは天の力によってシオンに連れ去られた。
すると、天の神が民の残りの者を見て泣かれた。エノクはそのことを証して言った。「どうして天が泣き、雨が山々に降り注ぐようにその涙を流すのですか。」
また、エノクは主に言った。「あなたは、永遠から永遠にわたって聖なる御方であるのに、どうして泣くことがおできになるのですか。
人ひとが地の微粒子、まことにこの地球のような幾百万の地球を数えることができたとしても、それはあなたが創造されたものの数の始めにも至りません。あなたのとばりは今なお広がっています。それでも、あなたはそこにおられ、あなたの懐はそこにあります。また、あなたは公正な御方です。とこしえに憐れみ深く、思いやりの深い御方です。
あなたは御自分が創造されたすべてのものの中から、永遠から永遠にわたって、シオンを御自分の懐に取り去られました。あなたの御座のある所には、ただ平安と公正と真理だけがあります。憐れみはあなたの前を進み、終わりがありません。どうしてあなたは泣くことがおできになるのですか。」
主はエノクに言われた。「これらあなたの兄弟たちを見なさい。彼らはわたし自身の手で造られたものである。わたしは彼らを創造した日に、彼らに知識を与えた。また、エデンの園で人に選択の自由を与えた。
わたしはあなたの兄弟たちに語って、互いに愛し合うように、また父であるわたしを選ぶようにという戒めも与えた。ところが見よ、彼らは愛情がなく、自分の血族を憎んでいる。
わたしの憤りの火は彼らに向って燃えている。わたしは激しい憤りをもって、彼らに洪水を送ろう。わたしの激しい怒りが彼らに向かって燃えているからである。
見よ、わたしは神である。聖なる人とはわたしの名である。賢慮の人とはわたしの名であり、無窮も永遠もわたしの名である。
それゆえ、わたしは手を伸ばして、わたしが造ったすべての創造物を手に取ることができる。また、わたしの目はそれらを貫くこともできるが、わたしの手で造られたすべてのものの中で、あなたの兄弟たちの中にあるような大きな悪事のあったことはない。
しかし見よ、彼らの罪はその先祖の頭にある。サタンが彼らの父となり、彼らの行く末は悲惨なものとなる。そして、すべての天が、まことにわたしの手で造られたすべてのものが、彼らのために泣くであろう。それゆえ、これらが苦しむのを見て、どうして天が泣かないということがあろうか。
しかし見よ、あなたがその目で見ているこれらの者は、洪水の中で滅びるであろう。見よ、わたしは彼らを締め出す。わたしは彼らのために獄を用意している。
また、わたしの選んだ者がわたしの前で嘆願した。それゆえ、彼は彼らの罪のために苦しみを受ける。わたしの選んだ者がわたしのもとに帰る日に彼らが悔い改めるならば、その日まで、彼らは苦しみの中にいるであろう。
このゆえに、天と、わたしの手で造られたすべてのものは泣くのである。」
そして、主はエノクに語り、人の子らのすべての行いをエノクに告げられた。そこでエノクはそれを知り、彼らの悪事と惨めな状態を見て泣き、その両腕を伸べた。すると、彼の心は永遠のように膨れ広がり、その胸は悲しみに打たれた。そして、永遠なるものすべてが揺れ動いた。
エノクはまた、ノアとその家族を見た。ノアのすべての息子たちの子孫が現世の救いを得るのを、彼は見た。
エノクはノアが箱船を造るのを見た。また、主がそれを見てほほえみ、御手の中にそれを保たれるのを、エノクは見た。しかし、悪人の残りの者には洪水が押し寄せ、彼らをのみ込んでしまった。
エノクはこれをみると、心に苦しみを覚え、その兄弟たちのために泣いて、天に向かって、「わたしは慰められるのを拒みます」と言った。しかし、主はエノクに言われた。「心を高めて喜び、そして見なさい。」
そして、エノクは見た。すると、ノアから始まり、地のすべての氏族が見えた。そこで、彼は主に叫んで言った。「いつ主の日が来るのでしょうか。いつ義なる御方の血が流されて、嘆き悲しむすべての者が聖められ、永遠の命を受けられるようになるのでしょうか。」
主は言われた。「それは時の中間、悪事と報復の時代である。」
見よ、エノクは、人の子がまことに肉体を取って来られる日を見た。そして、彼は心から喜んで言った。「義なる御方が上げられる。小羊は世の初めからほふられている。信仰によって、わたしは御父の懐におり、まことに、シオンはわたしとともにある。」
それから、エノクは地を見た。すると、地の中から声が聞こえた。「災いだ。人々の母であるわたしは、災いだ。わたしの子供たちの悪事のゆえに、わたしは苦しみ、疲れている。わたしはいつ安息を得て、わたしより出た汚れから清められるのか。わたしの創造主はいつわたしを聖めてくださり、わたしが安息を得て、義がしばらくの間わたしの面にあるようにしてくださるのか。」
エノクは地が嘆き悲しむのを聞いたとき、泣いて、主に叫んで言った。「おお、主よ、あなたは地に哀れみをかけられないのですか。あなたはノアの子孫を祝福なさらないのですか。」
エノクは主に叫び続けて言った。「おお、主よ、地が二度と洪水で覆われることのないように、ノアとその子孫を憐れんでくださるよう、わたしはあなたの独り子、すなわちイエス・キリストの御名によって願い求めます。」
そこで、主はそれに応じないではいられなかった。そして、主はエノクに聖約し、洪水をとどめることと、ノアの子孫に呼びかけることを彼に誓って約束された。
そして、主は、大地のあるかぎり、彼の子孫の残りの者がいつでもすべての民族の中に見いだされるという不変の定めを出された。
そして、主は言われた。「子孫からメシヤが出る者は、幸いである。彼は、『わたしはメシヤであり、シオンの王であり、永遠のように広い天の岩である。だれでも門を入り、わたしによって登る者は、決して落ちることがない。それゆえ、わたしが語った者たちは、幸いである。彼らは永遠の喜びの歌を歌いながら来るからである』と言う。」
さらに、エノクは主に叫んで言った。「人の子が肉体を取って来られるとき、地は安息を得るのでしょうか。どうか、これらのことをわたしにお示しください。」
すると、主はエノクに、「見なさい」と言われた。そこで、彼が眺めると、人の習わしに従って人の子が十字架に上げられるのが見えた。
また、彼は大きな声を聞いた。天が覆われ、神が創造されたすべてのものが嘆き悲しみ、地がうめき、もろもろの岩が裂けた。また、聖徒たちがよみがえって、人の子の右において栄光の冠を受うけた。
獄にいた霊たちの多くが出て来て、神の右に立った。そして、残りの者は、大いなる日の裁きまで暗闇の鎖につながれていた。
そこで再び、エノクは泣き、主に叫んで言った。「地はいつ安息を得るのでしょうか。」
するとエノクは、人の子が御父のもとに昇って行かれるのを見た。そこで、彼は主に呼びかけて言った。「あなたは再び地上に来られないのでしょうか。あなたは神であられ、わたしはあなたを知っており、あなたはわたしに誓いをなし、あなたの独り子の名によって尋ねるようにわたしに命じられました。あなたはわたしを造り、あなたの御座に至る権利を、わたし自身によらず、あなた御自身の恵みによってわたしに与えてくださいました。それでわたしは、あなたが再び地上に来られるかどうかお尋ねするのです。」
すると、主はエノクに言われた。「わたしが生きているように確かに、わたしは終わりの時に、すなわち悪事と報復の時代に来て、わたしがノアの子孫に関してあなたに立てた誓いを果たそう。
地が安息を得る日が来る。しかし、その日の前に、天は暗くなり、暗黒の幕が地を覆うであろう。天が震え、地も震えるであろう。そして、ひどい艱難が人の子らの中にあるが、わたしは自分の民を守ろう。
また、わたしは天から義を下そう。また、地から真理を出して、わたしの独り子と、死者の中からの独り子の復活と、またすべての人の復活について証しよう。そして、わたしは義と真理が洪水のごとくに地を満たすようにし、わたしが備える場所、すなわち聖なる都に地の四方からわたしの選民を集めよう。それは、わたしの民がその腰に帯を締め、わたしの来臨の時を待ち望めるようにするためである。わたしの幕屋はそこにあり、そこはシオン、すなわち新エルサレムと呼ばれるであろう。」
また、主はエノクに言われた。「そのとき、あなたとあなたの町のすべての者はそこで彼らに会い、わたしたちは彼らを懐に迎え入れ、彼らはわたしたちを見るであろう。そして、わたしたちは彼らの首を抱き、彼らはわたしたちの首を抱いて、わたしたちは互いに口づけするであろう。
わたしの住まいはそこにある。それは、わたしが造ったすべての創造物の中から出て来るシオンである。そして、千年の間、地は安息を得るであろう。」
それからエノクは、人の子が千年の間地上で義のうちに住むために、終わりの時に来られる日を見みた。
しかし、その日の前にひどい艱難が悪人の中にあるのを、彼は見た。彼はまた海も見たが、それは荒れていた。そして、人々は気落ちして、悪人に下る全能の神の裁きを恐れながら待っていた。
主はエノクに、まことに世の終わりに至るまですべてのことを示された。そして、彼は義人の日、彼らの贖いの時を見て、喜びに満たされた。
エノクの生涯におけるシオンの時代は、合わせて三百六十五年であった。
エノクとそのすべての民は神とともに歩み、彼はシオンの中に住んだ。それから、シオンはなくなった。神が御自身の懐にそれを迎え入れられたからである。そのことから、「シオンは消えうせた」という言葉が広まった。
(『モーセ書』第6章21節、26節〜68節、第7章1節〜69節)
以上がモーセ書から引用したエノクの記録です。
古代の預言者の中には、主によってこの世の終わりまでを見せられた者が複数いますが、エノクもまたそのひとりです。
シオンの帰還
さて、モーセ書にありますように、エノクが導き、主によって神の懐に上げられた町がシオンです。
主の再臨に先立って、エノクのシオンは天から戻ってきます。
新約聖書にも新エルサレムについて記述されている部分があります。
黙示録から引用します。
『わたしはまた、新しい天と新しい地とを見た。先の天と地とは消え去り、海もなくなってしまった。
また、聖なる都、新しいエルサレムが、夫のために着飾った花嫁のように用意をととのえて、神のもとを出て、天から下って来るのを見た。
最後の七つの災害が満ちている七つの鉢を持っていた七人の御使のひとりがきて、わたしに語って言った、「さあ、きなさい。子羊の妻なる花嫁を見せよう」。
この御使は、 わたしを御霊に感じたまま、大きな高い山に連れて行き、聖都エルサレムが、神の栄光のうちに、神のみもとを出て天から下って来るのを見せてくれた。』
(『ヨハネの黙示録』第21章1節、2節、9節、10節)
冒頭で申し上げましたように、わたしたち末日聖徒イエス・キリスト教会の会員はシオンを築くよう勧告されていますが、ここでいう『シオン』はエノクの町とはまったく別物です。
わたしたちの教会では世界中に数多くの礼拝堂を建てています。
その地元に住む会員はそれぞれの礼拝堂に集い、聖餐式をはじめとするいくつかの儀式を執行します。
わたしたちはそれぞれの住む地で『心の清い人々が住む所』という意味でのシオンを築くように勧告されているのです。
新エルサレム
主の再臨の前に天から降ってくるエノクのシオンを指して『新エルサレム』と呼ぶことがあります。
これは現在イスラエルという国に存在しているエルサレムとは別物です。
あくまでも『新』エルサレムです。
ですが、現在イスラエルにあるエルサレムも大きな戦ののち破壊され、主のために再建されることが預言されています。
モルモン書に収められている『エテル書』から引用します。
『またこの地(注釈:現在のアメリカ大陸)は新エルサレムが天から降って来る場所であり、主の聖所であると、彼は告げた。
見よ、エテルはキリストの時代を目にし、またこの地の新エルサレムについて述べた。
彼はイスラエルの家と、リーハイが出て来るエルサレムについても述べた。エルサレムは破壊された後、主のために聖なる都として再び築かれる。したがって、それは昔存在していたので、新しいエルサレムではあり得ないが、それは再び築かれて、主の聖なる都となる。それはイスラエルの家のために築かれる。
また新エルサレムは、ヨセフの子孫の残りの者のためにこの地に築かれる。このことについてはすでに予型があった。
ヨセフは自分の父をエジプトの地に導いたので、父はそこで死んだ。そして主は、ヨセフの父が滅びないように、彼に憐れみをかけられたと同様に、ヨセフの子孫が滅びないように、彼らに憐れみをかけ、ヨセフの子孫の残りの者をエルサレムの地から導き出された。
ヨセフの家の残りの者は将来この地で増えて、この地は彼らの受け継ぎの地となる。そして、彼らは主のために昔のエルサレムのような聖なる都を築く。また、彼らはもはや乱されることはなく、終わりが来て大地が過ぎ去る。
しかも、新しい天と新しい地がある。その天は以前のものに似ている。ただ以前のものは過ぎ去り、すべてのものが新しくなるだけである。
その後、新エルサレムが成る。そこに住む者たちは幸いである。彼らの衣は子羊の血によって白いからである。彼らは、イスラエルの家に属するヨセフの子孫の残りの者の中に数えられる者たちである。
またそのときに、昔のエルサレムも成る。そこに住む者たちは幸いである。彼らは、子羊の血によって洗われているからである。彼らは散らされた後に、地の四方および北の地方から集められた者たちであり、神が彼らの先祖アブラハムと交わされた聖約を果たされるときに、それにあずかる者たちである。』
(『エテル書』第13章3節〜11節)
引用した部分の冒頭にある『新エルサレム』はエノクの町シオンを、『この地の新エルサレム』はわたしたち末日聖徒たちが築き上げる町を指しています。
さらに『リーハイが出てくるエルサレム』は現在イスラエルにあるエルサレムを指します。
天から降ってくるエノクのシオンと、アメリカ大陸に築かれる新エルサレムはひとつとなることが預言されていますが、具体的にどのような形をとってひとつとなるのかは想像することしかできません。
ただ、主が来られた後に『新しい天と新しい地』になったとき、再建されたエルサレムと新エルサレムの二つの町が地上の首府となります。
『それは、新エルサレム、平和の地、避け所の都、いと高き神の聖徒のための安全の地と呼ばれるであろう。
そして、主の栄光がそこにある。また、主の恐怖もそこにあるので、悪人はそこに来ようとしない。そこはシオンと呼ばれる。
そして、悪人の中にいて、隣人に対して自分の剣を取らないものは皆、安全のために必ずシオンに逃れて来なければならない。』
(『教義と聖約第45章66節〜68節)
さいごに
聖なる都、また心の清い人々が住む所としてのシオンは、世界中で築き上げられるでしょう。
そして来るべき福千年には『シオン』と呼ばれる新エルサレムがアメリカ大陸に築かれ、心の正しい人々はそこで主の栄光を目にすることになります。
今回はここまでにしましょう。
聴いてくださってありがとうございました。
またお会いしましょう。
おやすみなさい。
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